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大阪高等裁判所 昭和35年(く)74号 決定 1960年9月16日

少年 S(昭二〇・一・一五生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告理由は、末尾に添付した各抗告申立書に記載のとおりであつて、要するに、原決定の処分には決定に影響を及ぼす著しい不当があると主張するものと解せられるのであるが、本件保護事件記録及び少年調査記録を精査検討し、本件非行の動機、体様、回数、少年の性格、行状、交友関係、家庭環境、保護者の監護能力その他前記記録に現われた諸般の事情を総合すると、原決定が少年を初等少年院に送致したのはやむをえないところであつて、原決定の処分には著しい不当がないと思われるので、本件抗告は理由がない。

よつて、少年法三三条一項を適用して主文のとおり決定をする。

(裁判長判事 小田春雄 判事 山崎寅之助 判事 竹中義郎)

参考 抗告申立書

少年 S

右の者に対する窃盗等保護事件について昭和三五年八月一一日初等少年院送致の旨決定の言渡を受けましたが左記の理由に依つて不服につき抗告を申立てます。

昭和三五年八月一一日

抗告申立人父 F

大阪高等裁判所 殿

抗告の趣旨

本事件直前本人の友人関係を絶つため、親子相談致し、外出せずに親が側について監督し乍ら就業出来る研磨の仕事を致す事に決め、その設備も大方出来た矢先に本件に依る御調べの身となり親の気持ちとして残念でなりません。

本人の性質として意志薄弱のため友人に誘われますのでこの点を絶つには常に子供と共に生活して一定の職を身につけさせ乍ら精神的に序々に善導して行く可く一大決心を致し斯の様な計画を致しましたものでその機会をお与え下さいます様御願致します。本人は年少者で将来ある身であり又、他の兄弟に対する影響も大いに考えられ、これが為兄弟達が世間を狭められ、精神的打撃を考えますと如何様な事をしてでも本人を立直らせます本人にも面会致しましたが非常に悔いて居り親として見て居られない位泣きわびて居ります。

私のいたらぬ為世間に対し御迷惑をお懸け致しました段重々御詑び申上げます。

抗告申立書

神戸再度山学院在院

私は、かんべつ所も初じめてだし、学園なんかもいつたことがないので、かんべつ所でこりました。こん度は家にかえつてりつぱな人間になつて、母や父に親こうこうしたいと思つていたのに、学院なんかに、おくられるとは、全然、思つていませんでした。家にかえつて、皆さんがびつくりするような、まじめな人間になります。きつとなつて見せますから、ここから出して下さい。家にかえれたら、わるい友だちと、わかれて、家で一生けんめいに、はたらきます。母親たちには、絶体、心配は、おかけいたしません。家にかえして下さい。今後わるいことをしたら二年でも三年でも入りますから、今度だけは、おゆるし下さい。早く家にかえつて一生けんめいに、はたらきたいのです。僕の、きようはんも、品物を、うつて、もらつた人もつかまつたし今度だけはこりたから、みんな、しようじきにいつたし、とつた品物も少々かえつているし、今度だけは、ゆるして下さい。きつとりつぱな人間になります。

昭和三十五年八月十九日

大阪高等裁判所長 殿

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